1.内科治療
内服薬や注射薬などの薬物を用いた治療の総称です。それに対して外科治療は麻酔下で行う手術が中心の治療です。カテーテル治療(インターベンション治療)は内科治療に分類されます。
2.カテーテル治療(インターベンション治療)
足や首の血管から細くて柔らかいカテーテルを挿入して、問題のある血管や心臓を治療する方法です。犬猫では全身麻酔下にて行います。開胸術や開心術などの外科治療と比較して侵襲性の低い(=患者への負担が少ない)治療とされています。
動脈管開存症
コイル状の詰め物を用いるコイル塞栓症や、円盤状の閉鎖栓を用いるAmplatz Canine Duct Occluder (ACDO)塞栓術が犬では一般的なカテーテル治療となります。ともに大腿動脈(股の動脈)からカテーテルを挿入することにより行うことが一般的です。
コイル塞栓術では、生体内に留置可能なコイル(インコネル合金製の細いワイヤーをスプリングのような形状にしたもの)をカテーテルを用いて動脈管まで持っていき短絡を塞栓させる方法です。Amplatz Canine Duct Occluder(ACDO)塞栓術では、犬専用に作られた円盤状ニチノール合金製の閉鎖栓を用います。コイル塞栓術同様に、カテーテルを用いて動脈管まで閉鎖栓を運んでいきます。2つある閉鎖栓のかさを順々に開き、短絡孔を両側から挟み込む形で閉塞させます。
コイル塞栓術
細い⽣体内に留置可能なコイルという⽷をカテーテルで短絡⾎管まで持って⾏きそれをランダムにコイル状に巻いて置いてくることによって短絡⾎管を遮断する⽅法です。
Amplatz Canine Duct Occluder (ACDO)塞栓術
専⽤に作られた⾃⼰拡張型のデバイスをカテーテルで動脈管に置いてくることで、動脈管を閉鎖する⽅法です。ごく⼩体重の症例ではサイズがないため、⼀定以上の体格が必要です。
肺動脈狭窄症
カテーテルの先端に小さな風船がついているバルーン・カテーテルを用いて狭窄を解除する治療法をバルーン肺動脈弁形成術と呼びます。首の静脈からカテーテルを挿入し、肺動脈の狭窄部位にバルーンを位置させ、膨らませることで内側から弁を広げ狭窄を解除します。弁の異常により狭窄が生じている場合により有効な方法です。バルーンに刃が付いたカッティング・バルーンを用いた手技や、弁ごと肺動脈の狭窄部を広げてしまうステント留置術も行うことがあります。
バルーン肺動脈弁形成術
⾎管からカテーテルを使って医療⽤のバルーン(⼩さな⾵船状のもの)を肺動脈弁の狭窄部位に持って⾏き、そのバルーンを膨らませることで内側から弁を広げ、狭窄を解除して正常な⾎流を取り戻す治療です。
ステント拡張術
恒久的ペースメーカ植込術
ペースメーカ植込み術は、ふらつきや失神などの症状を認める徐脈性不整脈に対して行います。症状の改善や突然死のリスクを軽減させ生命予後を改善させるために行われる治療です。
ペースメーカは電気刺激を発生させる本体(ジェネレータ)と電気刺激を心臓に伝えるペーシングリードの2つからなります。ペーシングリードの設置場所により心内膜ペーシングと心外膜ペーシングの2つ手技に分類されますが、前者は首のっ静脈(頸静脈)からペースメーカリードを挿入し、右心室に内側(心内膜)に固定させます。そのため、この手技はカテーテル治療の一つとされます。後者は一般的に左心室先端(心尖部)の外側(心外膜)にペースメーカリードを固定します。この手技は開胸術を実施し、心臓を露出させてペーシングリードを固定するため、外科治療のひとつであるとされます。その後、本体(ジェネレータ)は皮膚や筋肉の間に埋め込みます。
心内膜ペーシングは小さな犬や猫では不向きであり、心外膜ペーシングが選択肢となります。
心内膜ペーシング
経カテーテル的僧帽弁修復術
体外循環を用いての開心術ではなく、心臓を止めずに(心拍動下)にてカテーテルを用いて僧帽弁を修復する手技です。心臓の先端からカテーテルを挿入し、専用のクリップを用いて前後2枚の僧帽弁を挟み込みます(クランプする)。小さく開胸を行う必要があり、外科治療とカテーテル治療を組み合わせた手技であることからハイブリッド治療とも呼ばれます。開心術と異なり、心停止がないことから患者への負担が少なく、手術時間や入院期間も短いことがメリットとなる。
右側三心房心
バルーン形成術
⾎管からカテーテルを使って医療⽤のバルーン(⼩さな⾵船状のもの)を肺動脈弁の狭窄部位に持って⾏き、そのバルーンを膨らませることで内側から弁を広げ、狭窄を解除して正常な⾎流を取り戻す治療です。
3.外科治療
動脈管開存症
動脈結紮術
動脈管開存症の治療としてカテーテル治療を行うことが難しい低体重の症例では外科治療が唯一の選択肢となります。動脈管結紮術では、開胸を行い動脈管を縫合糸で直接結紮することで動脈管を閉鎖する治療です。開胸下での動脈管を閉鎖する方法は縫合糸のほかに専用の血管クリップを使用して動脈管を閉鎖することもあります。
恒久的ペースメーカ植込み術
心内膜ペーシング
カテーテル治療の項の恒久的ペースメーカ植込み術(心内膜ペーシング)の解説を参照